甲状腺はのど仏の下の皮膚の中にある蝶々の形をした組織で、ここから甲状腺ホルモンが分泌されます。甲状腺ホルモンは、身体の代謝や子供の成長に欠かせないホルモンです。
しかし高齢になると甲状腺ホルモンが低下し、むくみや疲れやすさ、便秘、体重減少などを生じてきます。ひどくなると記憶力が低下し、認知症と間違われることもあります。従って、認知症と言われた方は、血液検査で一度は甲状腺ホルモンを調べてもらうと良いでしょう。
甲状腺機能低下症は、血液中のFT4とTSHと言うホルモンを調べることでわかります。 FT4は甲状腺から出るホルモンで、甲状腺機能低下症では低下します。 一方、TSHは甲状腺刺激ホルモンと言い、脳の中の下垂体と言うところから分泌され、甲状腺ホルモンが出るように指令を出します。甲状腺機能が低下すると、TSHは甲状腺ホルモンを多くだそうとしてホルモン量が増えます。このためTSHは甲状腺機能のスクリーニングや治療効果の判定に使われます。
甲状腺機能低下症は、軽度のものも含めると男性の5%、女性の9%に見られる頻度の高い病気です。成人の甲状腺機能低下症の約90%は慢性甲状腺炎(橋本病)が原因で、この場合、TSHは上昇します。FT4は低下しますが、軽度の場合は正常範囲内のこともあります。
甲状腺機能低下症を治療する場合、チラージンSという甲状腺ホルモンのお薬を服用してもらいます。妊娠中の場合、甲状腺機能の低下は流産、早産になる割合が高くなるため、診断がついた時点ですぐに薬の服用を開始します。
それ以外の方では、軽症の場合はまずヨードの過剰摂取を控えていただきます。ヨードは海藻類に多く含まれているため、控えめに摂るようにしてもらいます。ポピヨンヨードでうがいをする習慣のある方はやめていただきます。ヨード制限を1ヶ月くらい行っても甲状腺機能が改善しない場合、チラージンSを少量から開始していただきます。
TSHの正常値は3〜4μU/ml以下ですが、65歳以上の高齢者の場合、TSHが10μU/ml未満の軽度の甲状腺機能低下症で症状がない場合は、治療は不要と言われています。実際の薬の服用に当たっては、かかりつけの医師によく相談してみましょう。