高齢になると足のむくむ方が増えてきます。当院でも、むくみを訴えて来院される方が時々おられます。
むくみ(浮腫)は皮膚の下に水がたまった状態です。顔面にもむくみは生じますが、多くの方では下肢のすねのあたりや足の甲にむくみがみられます。重力の関係で、朝はそれほどでなくても夕方にむくみが生じてきます。
むくみを調べるには、足のすねの部分を人差し指・中指・薬指の3本の指で約10秒間押さえます。むくみがあると、指を離したあとにへこみが残ることでわかります。
むくみの原因は、全身的なものと局所的なものに分けられます。全身的な原因としては心不全、腎不全などがあげられ、どちらも高齢になると増えてくる病気です。
高血圧、心筋梗塞、不整脈などがあると、心臓の血液を送り出す働き(ポンプ機能)が弱るために身体の中に水分がたまりやすくなり、結果としてむくみを生じてきます。
腎不全になると腎臓から水分を排出する力が弱くなり、むくみができるようになります。血液検査でクレアチニンが上昇し、eGFRが低下してきます。腎不全と心不全は合併する場合もあります。
心不全や腎不全でむくみがある方は、治療については医師とよく相談しましょう。日常生活では、1日の塩分摂取量を6g未満にすることが最も重要です。
その他、むくみの原因として重要なのは薬物による場合です。最近急にむくんできたと言って来院された方に、よく聞くと腰や歯の痛みなどで痛み止めを飲んでいたという場合があります。 痛み止めは心臓や腎臓に悪影響を及ぼす場合があり、痛みが落ち着けば飲むのは控えましょう。また元々腎臓の悪い方は服用には注意が必要です。
カルシウム拮抗薬などの高血圧の薬でもむくみが生じる事があります。少しぐらいなら心配ありませんが、気になるようでしたら主治医に相談しましょう。
その他さまざまな原因があります
高齢の方では、車椅子にずっと座りっぱなしでいると足が腫れてくることがあります。これはずっと座っていることで低いところに水がたまることで生じます。 治療はなかなかむずかしいですが、できるだけ足を動かして血流を良くし、さらに弾性包帯や弾性ストッキングを使っていただきます。
その他、甲状腺ホルモンの低下や、肝硬変などにより足のむくみが生じることがあります。
急に片方のふくらはぎのあたりが腫れ、痛みを伴う時は静脈に血栓が詰まった可能性があります。いわゆるエコノミークラス症候群と言われるもので、長時間飛行機に乗ったり、けがなどで数日間寝ていたりするとなりやすくなります。 放置すると血栓が肺の動脈に詰まり、命に関わることがあります。早めに内科などを受診しましょう。
いずれにしても、最近むくみが生じてきた場合、一度は内科で検査を受けることをお薦めします。