漢方薬というと、なにやら冷え症、胃腸虚弱など慢性の病気にじんわり効かせるというイメージがあるのではないでしょうか。 確かにそういう使い方もしますが、本来漢方は腹痛や下痢、発熱などの急性の病気やけがの腫れや痛みなどに用い、即効性を発揮してきました。 現代でも肩こり(葛根湯)、こむら返り、かぜ、めまい(五苓散)などに投与し、素早く効果を発揮します。
北海道の静仁会静内病院院長の井齋偉矢先生は漢方薬のこのような働きに注目し、漢方治療の普及に努めておられます。 くわしくはSBクリエイティブ「西洋医が教える、本当は速効で治る漢方」をご覧下さい。
漢方の即効性が最も発揮されるのは、こむら返りの時に使う芍薬甘草湯です。 運動中などにこむら返りを起こすと大変つらいですが、芍薬甘草湯を一包飲むことですぐに症状が軽減されます。このような薬は西洋医学にはありません。
最近インフルエンザが大流行しています。 インフルエンザになるとタミフルなどの抗ウイルス薬を処方しますが、タミフルだけではなかなか熱が下がらなかったり、解熱しても疲れが取れないこともあります。 このような時に漢方薬を併用すると、早く病気から立ち直ることができます。
インフルエンザ以外のかぜに対しては、西洋医学は有効な治療法を持ちません。 かぜ薬と言うと、病院では決まって「PL顆粒」が処方されます。 PL顆粒には抗ヒスタミン剤が含まれていますが、アメリカでは副作用のために子供に対して抗ヒスタミン剤の使用を禁止しています。 加えて最近では、PL顆粒には解熱鎮痛剤が含まれており、インフルエンザに使うと脳症などの危険性が有り、禁忌となります。 また高齢者に使うと尿が出にくくなったり、緑内障の方では眼圧が上がって視力障害を起こす危険性もあります。 それにもかかわらず大病院などでPL顆粒がよく使われるのは、西洋医学ではこれくらいしか薬がないからです。
これに対して漢方医学では、インフルエンザなどの高熱の時(麻黄湯)、初期のかぜ(葛根湯)、解熱したがしんどくて食欲がないとき(補中益気湯)、だらだらと長引くかぜ(桂枝湯)、鼻かぜ(小青竜湯)、のどかぜ(小柴胡湯加桔梗石膏)、咳の強いかぜ(麦門冬湯)、高齢者など体力の無い人のかぜ(麻黄附子細辛湯)など、患者の状態は症状に応じて多くの種類の薬が用意されています。
特に「補中益気湯」はかぜのあとなどの体力回復に使う薬ですが、インフルエンザの予防効果もあります。
この冬になってから、私も補中益気湯を毎朝1包服用しています。 そのおかげか、毎日のようにインフルエンザの方を診察していますが、今のところは元気に過ごせています。
漢方薬はどの薬にも体の持つ免疫機能を高める働きがあります。 最近は多くの医療機関で漢方薬が採用されており、ご希望の方は相談されるとよいでしょう。